見えない舌側矯正
近年における矯正装置の進歩は目覚しく、見た目に関しても一昔前の装置と比較すると、ずっと小さく、目立たなくなりました。しかし歯の表面につける方法ではいくら目立たなくなったとは言え、完全に見えないわけではありません。
「矯正治療を受けたいが、装置が見えるのがイヤ」、「人知れず矯正治療を受けたい」といった方には歯の裏側に装置をつける舌側(ぜっそく)矯正装置というのがあります。
舌側矯正装置には多くの種類がありますが、最近の主流はセルフライゲーションブラケット装置(写真はクリッピーL)というワイヤーとブラケットの摩擦抵抗が小さくなるものがあります。この構造により、ワイヤーにそって歯が滑るように迅速かつ効率的に移動します。よって従来のようにワイヤーをきつく固定する方法にくらべると治療期間が短縮する効果も期待されます。また細くやわらかい形状記憶ワイヤーを使用し、きつく固定しませんので、歯の移動による痛みが軽減されるとも言われています。
<デメリットについて>
舌側矯正装置には見えないという最大のメリットがありますが、デメリットもあります。例えば、話す時に舌が当たり上手くしゃべることが出来なくなる発音障害(個人差はありますが、大体1~2か月で慣れる方が多いようです)や、舌に傷が付き易い、ブラッシングがしづらい、等々ございますので、ご心配の方は、事前に担当医やスタッフにしっかりと相談されることをお勧めします。
歯根の位置も考慮したデジタルセットアップによる舌側矯正装置の作製
当院の舌側矯正装置は、口腔内3Dスキャナー(iTero5Dプラス)による歯冠のデータとデジタルX線CTで得られる歯根のデータを統合させたデジタルセットアップ模型から作製します。これは歯を動かす方向の骨と歯根の関係を把握しておくことで矯正治療による歯根吸収(歯の根が短くなる)・歯肉退縮(歯茎が下がる)・歯髄壊死(歯の神経が死ぬ)などのトラブルを避けるためです。また従来の石膏模型から一本一本の歯を切り出して作製するアナログな方法よりも格段に舌側矯正装置の精度が向上するので、より質の高い安全な舌側矯正治療を提供する事が可能となりました。
初診時の口腔内デジタルデータ
歯根も考慮したデジタルセットアップ